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『たりないふたり』で見た若林の飲み会回避「ねこだまし」【Hulu】

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『たりないふたり』はオードリー若林と南海キャンディーズ山里によるバラエティ番組。何度かリニューアルされながら、2020年にも愛されている番組だ。芸能界で生きていくのに、なにかが「たりないふたり」が足りないものについて考えながら、コントや漫才を行うバラエティ番組。ゲストを呼ばすにほぼ同期の2人の考えが聞けるのが面白い。

ビデオ・オン・デマンドのサブスクリプションサービス「Hulu(フールー)」で過去分が全て見れるのだが、初期の頃の放送で「ねこだまし」という技が紹介されていて、感動してしまった話。

飲み会回避技「ねこだまし」

『たりないふたり』では芸能界で直面するイベントに対して乗り越え方を提唱してくれている。その1つの回で「飲み会の回避方法」を提唱する回がある。飲み会では「芸能界の強者」によって、不快な思いをさせられるため、避けたいというのが彼らの考えのよう。

その中で紹介されたのが、若林提唱の「ねこだまし」
山里:若林くん、飲みに行こうよ!
若林:嫌です。
山里:えっ、
若林:嫌です。
山里;いや、行こうよ。
若林;そもそも、僕、山里さん嫌いですから。
山里:えっ、そ
若林:嘘っすよ。歯医者!
山里:あっ、
若林:山里さんのこと好きに決まってるじゃないですか!
   歯医者です。すみません、また今度行きましょう。
山里;そっか、また今度な!

最初に強く否定する。相手が怯んだところで本当のことを言う方法。
これが若林の提唱する「ねこだまし」だ。
いかに、隠れて帰ったり、嘘だとバレずに断るかがポイントだったのに、自ら仕掛けた上で断っている。
見事だと思った。会場でも拍手が起きていた。

集団が嫌いな「あるある」が流行り

初期の「たりないふたり」が放送されていた頃は「ネガティブ」や「人見知り」を公言する人はあまり多くなかったかもしれないが、今ではバラエティ番組で1つのポジションになっている。

集団でいることが苦手で、1人で食事をしたり、1人で漫画を読むのが好きというキャラクター。芸人にとどまらず、俳優でもアイドルでも多い。「飲み会の断り方」や「コミュニケーションを避ける方法」は1つのあるあるにもなっている。

楽屋での挨拶や新幹線で先輩にあった時のふるまいなど、明るく接するのが苦手という姿勢で話をする人が多くなっている。「あるある」として認知を得て、共感をする人が多いが、作家の朝井リョウさんが1人焼き肉を「手軽な闇」と表現したように、大衆的でキャッチーな「孤独」が蔓延している気がする。

結局「コミュニケーション力」がものをいうか

その中で、当時(2013年頃?)に「ねこだまし」を提案していた若林さんはすごい。
ネガティブな人が明るく「人の心にづけづけ入ってくる人」を避けるという文脈で使われている「あるある」を跳ね返す妙案の「ねこだまし」。当時から「人見知り芸人」として売り出していた若林だが、既にコミュニケーション力が高かったことがわかる。

相手を傷つけかねない一言で相手をひるませる。その上で、本当のことを言う(歯医者の予約があるのも嘘なんだが)。一度、嘘をいった後の否定なので、説得力があるし、相手からの追撃もない。自分が使えるかはわからないが、納得してしまった技だ。

相手の反応を予想して、自ら攻撃的にいくことで逆に相手を納得させる。戦国時代の名将のような策略だ。
この策略も毎回の誘いには使うことができないのが玉に瑕。ただ、「ねこだまし」を生みだせるようであり、実践できるようなコミュニケーション力があれば、他にうまく断ることもできそうだし、なんなら集団の飲み会もばっちり楽しめると思う。

現代版コミュニケーションの「攻撃は最大の防御なり」は「ねこだまし」のことだと言ってもいい。